TENGUBOY (井上ジョー) "Shockman"

職人魂に心揺さぶられましょう。

 

2013年夏にリリースされたシングル曲。TENGUBOY としてのデビューシングルという扱いになっていて、名実ともに代表作となった名曲です。

 


TENGUBOY 『SHOCKMAN』

 

ごつごつにエレクトロなトラックに、小気味よいラップが炸裂していきます。歌詞は二つ意味があることもあって、下ネタもたくさん挟んでくるのが特徴ですね。基本的に全力でフザけてるのが TENGUBOY ですから。個人的に、構造上英語とかと比べると日本語はラップに向かないんじゃないかと思っていたんですが、もう当然のように韻を踏みまくっていて感動しました。

なお販売されている音源には、MV では聴くことのできないフレーズが追加されています。Spotify などストリーミングでも聴けるので、確認してみてください。

 

曲中、ニューヨークについての言及があるんですが、ジョーさん自身はロサンジェルスで生まれ育っています。NY は東海岸、LA は西海岸なので、同じ英語でもかなり違って聞こえますね。

 

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この曲の MV って、TENGUBOY の楽曲の中では一番再生されているんですよね。見れば見るほど新しい発見があるというか、どういう意味があるんだろう? みたいなカットがあったりしてたしかに面白いです。ストリートなテイストのあるビビッドな衣装・「EDM × コメディ」というキャッチコピー・アイコニックなサングラスなど、この MV には TENGUBOY のアイデンティティが凝縮されています。電気グルーヴやデーブ・スペクターさんといった大物から絶賛されて鳴り物入りでデビューしたという経緯もありますので、当時からかなり注目度は高かったようです。

また、ジョーさんはこの MV を含め TENGUBOY のほとんどの MV を自作していますが、そのクオリティの高さから、ソニーが主催する音楽講座フェスの講師にも抜擢されてもいるんです。ちなみに、ジョーさんが参加したこの2014年の回が、このフェスの初回だったりもします。ソニーがこうした企画を通したのは、もしかしたら自社と契約しているアーティストの多才さを活かせることに気づいたからで、ジョーさんの映像作家としての才能もその一例かもしれませんね。ともかく、この楽曲の映像は宣伝の旗頭としても使われてますんで、TENGUBOY といえばこの曲と言っていいでしょう。

 

さて、リリース前後に時を戻しましょうか。こちらは2013/08/02の Facebook への投稿です。でもこれってなんだか不思議な投稿なんですよね。この曲の MV が公開された08/30には "We've Been" や "Piko Piko Rock" の MV も公開されていますし、音源の販売が始まった09/19は同じく "We've Been" の発売日です。どう考えてもこれだけが 1st とは言い切れないですし、'Shockman / We've Been' みたいに両A面で売り出してもよかったんじゃないかと思いますが、結局はバラ売りに落ち着いています。まぁこれは活動開始のアナウンスくらいに受け取ればいいんでしょうね。

 

そして、こちらは2013/08/29のインスタへの投稿です。「08/30に何かあるよ!」とのことですが、この日には YouTube チャンネルが設置されて MV も公開されました。この写真は何となくソニー公式アーティストページに見えますね。

 
 
 
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 2013年09月12日にはリリースデートが正式発表されました。

 

 09/19に投稿された、テレビ出演時の一枚。フジテレビ系列の『魁!音楽番付』です。ファンの間ではテレビ出てほしい! っていう声もありますが、この頃はちゃんとメインストリームにいたんですねぇ...。

 

MV の公開から二か月後、音楽ユニット Spontania で DJ として活動する MASSATTACK (マサタック、福原 正隆さん) がこの曲のリミックスを作成しました。公式なお仕事ではなかったようで、YouTube ではソニーから著作権侵害でブロックされてしまっていました。自身の Soundcloud ページでも公開なさってますんで、気になる方は調べてみてください(ちなみに、ジョーさんとマサタックさんはツイッター上では相互フォローしていますので一応本人公認という扱いかもしれません)。

 

 

 

最後に、きわどい考察をしてみたいと思います。ラスサビ前の「棒を握って~」からのくだりに関してです。具体的に何かを意味しているのかは明かされていませんが、MV の演出と相まってかなり生々しいニュアンスを持っていると一般に考えられています。何ならこの部分のせいで『知り合いに勧めづらい曲』になってしまっているという声も多く、たしかにちょっとやりすぎた感があるかもしれません。

まぁおフザけで終わらせても全然かまわないんですが、これってどういう意味だと思う? って聞かれたら私はこう答えると思います。

 

この楽曲がテーマにしているのは、昔気質の寿司職人とその弟子ですね。相撲や落語界などがイメージしやすいかと思いますが、こうした伝統的な業界では師弟関係が重視されています。優れた技術を持つ人に弟子入りして薫陶を受けるわけです。この時、概して親方は親身に弟子を教え導くわけではなくて、弟子は作業を通して経験し技術を盗んでいくことが肝要です(だから12年目の新人という概念が成り立つわけですね)。

弟子は自発的に入門するわけですから親方にはいい先生となる義理は必ずしもなくて、弟子はとにかく親方の求めることをしなければなりません。つまり、今風かつ限りなくネガティブな言い方をすれば、パワハラが横行する閉鎖的な関係とみることも可能なんです。

そう考えると、この親方と弟子のこのやり取りは・・・ほんとに生々しい関係にスポットを当てた結果なんじゃないでしょうか。こうしたクローズドな師弟関係に対しての問題提起なのかもしれません。そして、そうした「献身性」を指して、Shocking な職人魂と歌っているのかも...? このシーンのおかげで、同じサビがまったく違って聞こえてくるのが面白いですね。

まぁこれはあくまで私の考えなので、そんなに重く受け止めないでくださいね。

みなさんはこの曲にどんな意味があると思いますか? そもそも意味があると思いますか? ここにどんな意味を見出すかは、完全にみなさんの自由です。