井上ジョー "Ballerina"

オルゴールがステキ。

 

この曲は、2010 年のシングル '風のごとく' に収録されています。同シングルの中では唯一タイアップがなされていない地味な位置づけの作品ですが、それにも関わらず人気の根強い曲です。

 

 

 

以下、歌詞です。

 

 She's a ballerina

 A story about her freedom

 

 She does the flip

 And then she does the turn

 She concentrates as she raises her arms slowly

 

 Her eyes are set to the audience

 The music starts; it's time to dance

 So move your feet to the beat

 Just move your feet and dance

 

 The world turns like a renverse

 朝がまた来る 今日も頑張るぜ

 

 Life's like a promenade

 どんな時もあきらめないで

 

 Develope and elevate

 新たな何かが待ち受けてる

 

 She's a ballerina

 A story about her freedom

 Day to day 特訓の成果を感じて

 そしていつの日か Grand Jete

 

 Takes her leap to the world

 

 

 世界にはばたけ

 

 Take one step back and catch your breath

 Raise your right arm and bend

 Your wrist and point it to the left

 Then you lift your right leg

 

 Bend your right knee so that

 It is facing the right-hand side

 Now bring your left hand to your chest and then

 You say, "Shake!"(シェー!)

 

 She will be dancing for the world

 She is a one beautiful girl

 

 

renverse:「さかさま」などを意味するフランス語由来の英単語。

develope:develop の古いつづり。

grand jete:バレエ用語で「大きな跳躍」を意味します。ここでは比喩的な意味も含めてダブルミーニングになっています。

 

エレキギターにのせてシンセサイザーのリフというのはジョーさんではおなじみの手法ですね。"Closer" も同じ括りですから。もう鉄板です。

 

歌詞カードを見ないと何て言ってるかわからないけれど、確かに韻を踏んでるんですよね。renverse と 頑張るぜ と promenade と あきらめないで、あとは 感じて と Grand Jete は面白いですね。これらは韻踏めるなぁって何となくわかります。けど、ballerina と about her freedom で韻踏んでるのすごいですよね。エミネムの動画で自身がおっしゃっていた、「これで韻踏むんだ!?」を体現してます。

 

10段、11段のパート。緊張感のあるトラックにのせて身体を動かす様子が描かれています。どんなポーズを練習してるのかと思いきや、「シェー!!」って。漫画『おそ松さん』のイヤミさんがやるあれですね。ジョークが過ぎますぜジョーさん。

にしても、ここに限らず、歌詞が全体的にダイナミックです。筋肉の躍動するさまが目に浮かぶなぁ。

 

そして、最後のオルゴール。これで私はふと感じることがありました。ここまで、一人のバレリーナに関するお話をこの歌で見てきたわけですが、すべて誰かの想像のものだったのでは? オルゴールを手にした子どもが、そこで回り続ける可憐なバレリーナにあこがれ、彼女がオルゴールの箱から自由を得たときの物語を想像して歌にした感じ。最後にはパタッと蓋を閉めるような音まで聞こえてきそうな、かわいらしい情景が私の頭の中に展開されたんです。

こう考えると、13段の意味合いもより深まってくるかなと思います。13段はラスサビと一緒にこっそり歌われてますが、この歌では語られない彼女の将来を、語り手自信が語り手に言い聞かせているように聞こえます。「小説や映画などを鑑賞することは、登場人物のそれぞれの人生に途中参加することだ」っていう言葉好きなんですが、この曲に関しては違うかなと思います。彼女の物語はこの歌で歌われている以上には、実は存在しないんです。単純にバレリーナの物語を見ているのではなくて、バレリーナの物語を語る子どもを見ているからです。彼女には過去も未来も存在せず、それが存在するとすればこの子どもの中にだけあり得ます。

 

この曲はジョーさんの友人のバレリーナに向けて作られたという話もあるようですが、私はひそかにこの(自分で言うのもなんですが)愛らしいストーリーを支持したいと思います。いろいろな解釈ができるのは面白いですね。

 

 

 

2012年12月08日に投稿されたこの動画。今では見ることができませんが、おそらく冒頭の映像はここから採られたのではないでしょうか。