ミュージシャン必見! 井上ジョー氏の楽曲の権利関係まとめ

みなさん、結構ルールって厳しいみたいですよ!!

 

 当ブログは井上ジョーさんの楽曲を紹介する過程で歌詞を掲載していたりしたんですが、この点についてお叱りを受けることがままありました。

 それをきっかけに、著作権について個人的にいろいろと調べてみたんですが、びっくりしました。知らないだけでルールのまぁ多いこと多いこと。私は法律屋さんではないのでここにある情報について何の保証もできませんが、私なりにまとめていこうと思います。

 

 

権利早見表

 

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この記事の内容を簡単にまとめると、こんな感じです。

 

Q1. カバーして良い曲とダメな曲がある!?

Instagram は OK で、Twitter はダメで...~

 

A1. あります。ちょっとややこしいですけどね。

 

JASRAC が諸権利を完全に管理しているもの

 (=YouTubeInstagramでカバーOK! 歌詞も載せていいよ! でもTwitter はやめとこうね!)

   「井上ジョー」「TENGUBOY」の楽曲(提供してるものも大体はOK)

JASRAC が一部の権利を管理しているもの

 (=ライブで演奏するときには JASRAC にお金払ってね! カバー動画上げるのは避けた方が良いかも。歌詞は管理してません!)

   「Joe Inoue」の楽曲のうち、'Joepop' シリーズと "Om Telolet Om"

× JASRAC が管理していないもの

 (=諸々、JASRAC 的には関係ないです!)

   「Joe Inoue」の楽曲のうち、上記以外

 

 このブログで好んでやってるのが、ジョーさんのキャリアを「井上ジョー名義」「TENGUBOY名義」「Joe Inoue 名義」で分けるやつです。単純にわかりやすいかなぁと思って言ってるだけなんですが、楽曲の権利について考える時には多少役立ちます。「井上ジョー」と「TENGUBOY」という名前は、ジョーさんがソニー傘下のレーベル Ki/oon に所属していた時に使っていたものですよね。そして、この名前でリリースされている楽曲の権利のすべては、JASRAC という団体に管理されているんです。他のアーティストに提供したものも、レーベルに所属してる人が歌ってるなら(一応確認した方が良いでしょうが)まず JASRAC の管理下にあると言っていいでしょう。こういう風に書かれると、「じゃあ権利ガッチガチで、本当は使っちゃいけないの?」って思う人もいるかもしれませんが、じつはその逆。JASRAC と契約している媒体においては、その媒体が使用料を払ってくれるので私たちは無料で使い放題なんです(ちなみにここでいう「使う」というのは、カバー動画を撮ってアップロードしたり、歌詞を載せたり、ということです)。あ、別に個人でやるのは構わないんですよ。シェアしたい! って思うと厄介なだけで。

 で、どの媒体が契約を交わしているかというと、 JASRAC利用許諾の声明を出しているのでそこから確認できます。結構いろいろな媒体・企業と契約がされていますが、その中で一般大衆に大きく影響するのは、YouTubeInstagramはてなブログ(これは私にとって大事な部分です)などでしょうか。これらの媒体では、JASRACが管理している楽曲ならば使用し放題、つまり、曲のカバー動画をあげたり歌詞を載せたりは自由です。

 でね、これがまずびっくりしたことなんですが、Twitter とは契約してないんですよ。つまり、TwitterJASRAC が管理している楽曲のカバー動画上げたり、歌詞を掲載したりするのは、ほんとはダメなんです。ダメというか、使用料を払えっていわれたら従わないといけないんですよね、多分。みんな知らないでやっちゃってるけどそれを片っ端から取り締まっても労力の無駄だっていうのでスルーされてるんじゃないかなと個人的には思いましたが、厳密には無料ではやっちゃダメなことになってます。一般人は、あぁそうなんだなぁ位に思ってくれればいいんですが、こういうことで生計を立てたいと思ってるミュージシャンは、知っておいた方が良い知識ですよね。個人契約を結んで、月額かなんかでお金をしっかり払えば問題はありません。払うものをちゃんと払えば、Twitter でもなんでも載せることは可能なんでしょう。

 

 今まで話してたのは、JASRAC が管理しているレーベル時代の楽曲に関してです。ここからは「Joe Inoue名義」の楽曲に関してなんですが、これの権利関係がとても分かりづらい...。できるだけわかりやすく書こうと思うので、辛抱強く読んでくださいな。

 まず、「Joe Inoue 名義」の曲というのは、レーベルから発売されているわけではなくて、インディーズっていうんですかね、たぶん個人事業なんですよ。感覚的には、音楽やってる隣の家のお兄ちゃんから自作の CD 買うようなのと同じなんですよね。まぁ、著作権は著作者の有名無名にかかわらず、何にでも発生するんですけども。

 で、ここでややこしいのが、Joe Inoue 名義の楽曲でも、一部は JASRAC に登録されてるっていうこと。しかも、上記のレーベル所属時の物とは違って、JASRAC がすべての権利を持っているわけではないんです。「一部の楽曲で、一部の分野の権利の一部を持っている」っていうんですよ。わかりづらいですね。

 前半部の「一部の楽曲」というのを具体的に言うと、'Joepop' シリーズ三作と "Om Telolet Om" です。このシリーズは連続してリリースされたわけじゃなくて、'Benkyo Tunes' 'Hats On! #1'  'Polyglot #1' を挟んでいるんですが、この三作は登録されていませんので、時系列で割り切れるわけじゃなくてある程度アルバムを選んで申請しているようです。

 で、後半の「一部の分野」というのを具体的に。私たちに関係がある「配信」というのはインターネット上での音楽利用のことで、カバー曲をアップロードするのはこれにあたります(ちなみに、もしあなたがミュージシャンで、自分のコンサートでジョーさんの曲を演奏したければ「演奏」の分野にあたるので JASRAC にお金を払えば OK で、カバーした曲を CD にいれて売ろうという場合には「録音」なので、JASRAC は管理してません。分野によって JASRAC が管理してたりしてなかったり、これは「一部の権利」ということですね。どのような使用方法がどのように分類されるかは JASRAC のヘルプから、楽曲ごとに管理の状況を見るには JASRAC の検索画面からどうぞ)。

 けどね、「演奏」「録音」は権利を持っている持っていないですっぱり整理できるんですが、この「配信」については、『権利の一部』を持っているとされています。これってどういうことなんですか? この辺は権利の所在が宙ぶらりんになっているように見えます。カバー曲はあげていいんですか、ダメなんですか? これについてはもうわかりません。JASRAC に聞いてみるしかありませんね。

 あと、こうしたブログに歌詞を掲載するのは JASRAC 的には「出版」にあたるわけですが、こちらは管理されていません。そのため、歌詞を SNS やブログに載せることはできません (この点については以下細かく説明します)。

 

 さて、先ほどの答えをもう一度載せておくと、

 

JASRAC が諸権利を完全に管理しているもの

 (=YouTubeInstagramでカバーOK! 歌詞も載せていいよ! でもTwitter はやめとこうね!)

   →「井上ジョー」「TENGUBOY」の楽曲(提供してるものもたいていはOK)

JASRAC が一部の権利を管理しているもの

 (=ライブで演奏するときには JASRAC にお金払ってね! カバー動画上げるのは...正直よくわからないから避けた方が良いかも。歌詞は管理してません!)

   →「Joe Inoue」の楽曲のうち、'Joepop' シリーズと "Om Telolet Om"

× JASRAC が管理していないもの

 (=諸々、JASRAC 的には関係ないです!)

   →「Joe Inoue」の楽曲のうち、上記以外

 

 

Q2. でもー最近の曲も良いやつ多いしさー

~それでもやっぱりカバーがしたい!~

 

A2. 本人に許可を取りましょう。

 

 結局、それしか方法はありません。JASRAC が管理してくれてる楽曲なら、そういった細かい連絡とかしなくて済むっていうのはお互いメリットなんですが、まぁ登録費とかがかかるのも事実で。

 レーベル時の楽曲をカバーするのは問題ありません。「Joe Inoue」名義の曲をカバーしたいなって思ったら、どこにアップロードするとかは関係なくジョーさん本人に許可を取った方が安全なようです。上で△の欄にある楽曲群も、JASRAC が『権利の一部』を管理しているだけなので、正直よくわかりません。まぁ許可が取れれば怖いものはありませんね。YouTube でも Instagram でも Twitter でも関係なく、とにかく許可を取りましょう。

 上の項でも述べましたが、歌詞に関して、レーベル時の楽曲は OK ですが「Joe Inoue」時代の楽曲のをブログにあげるのは、著作者に許可を取らない限りは基本的にはアウトです。これも、本人から許可が下りれば、OK なんですけどね。ただ、この辺についてはいろいろな考え方ができるのも確かで、それはQ5で。

 

 

Q3. 許可って言ってもなぁ...

~どこから話を付けられますか!?~

 

A3. 各種媒体から交渉しましょう。

 

水面下で交渉:「Patreon のメッセージ」「Facebook の Messenger」「Instagram の DM」

オープンに交渉:「Patreon でコメント」「メンバーシップ限定配信でコメント」「YouTube の生配信でコメント」「YouTube のコメント欄」「Twitter でメンション」「Facebook のコメント欄」「Twitter のコメント欄」「note のコメント欄」...

 

 いやぁもう、各種媒体から頑張ってコンタクトを取りましょう。「この曲カバーしてどこどこにアップしたいんですけど!」「いい曲なので歌詞も含めて紹介したいんですけど!」ってストレートに思いをぶつければいいと思います。

 上には、思いつく限りのルートをいけそうな順に並べてみました。今まではホームページにプレゼントの宛先を書いたページがあって、日本の某所が窓口になっていたんですが、今ではその表示が消えちゃってますね。仕事用のメールアドレスとかも公開されていませんし、窓口となりうる存在も居ませんので、こうした SNS を通じてアクセスするしかありません。2021年1月時点でアクティブな SNS は多分このくらいだと思います。以前ほど SNS を活発に使っていないので(昔はルーマニア旅行に行くのに「誰か泊めてくれない?」って言うくらいアクティブでした)、YouTube を出るとあまりファンとの交流は多くありません。その代わりというか、YouTube の生配信では交流できる可能性がかなり高いでしょうね。スーパーチャットをすればまず読んでもらえるでしょうが、それは迷惑になってしまうでしょうから避けましょう。話がそれてしまいますが、応援したい気持ちでのスパチャは純粋でいいのですが、どこかで歪んでしまって自己アピールのためにお金を積むというのは百害あっても二利ほどしかありません。気を付けましょうね。

 ただ、DM などのクローズドなメッセージにはお答えしないという方針があるようで、過去には Facebook に来た情報誌からの取材オファーまでもお断りしているそうです。Twitter の DM も封鎖されてますし、もしかするとオープンな場所でコンタクトを図る方が良い場合もあるかもしれません。

 個人的には、Patreon での交渉が一番有効なんじゃないかなと思います。一概には言えませんが、無料で使用できる他のメディアよりもやはりお金を支払っているものの方がチャンスは大きいのではないでしょうか。コミュニティの母数も全世界からぐっと減りますしね。

 

 

Q4. 歌詞の翻訳は?

~歌詞翻訳ブログのホント~

 

A4. 基本的にはNGなので、許可を取りましょう。ただ、条件付きでOK。

 

 これも私知らなかったんですが、歌詞の翻訳って著作者だけが持ってる権利なんですよね。 JASRAC ですらこれは持っていないので、レーベルに入ってる入っていない関係なく、有名無名関係なく、どんな楽曲でも翻訳時には著作者の許可が必要です。OK となる条件については、以下の項目とかかわるので次で示します。

 

 

Q5. 歌詞を引用は?

~当ブログの命運はいかに?~

 

A5. 条件を満たせばOK。

 

 歌詞に限らず、本でも論文でも著作物を引用することは何ら問題ありません。「引用」というのは、以下の条件を満たす行為を指します;

 

[1]公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。(注5)[2]国等が行政のPRのために発行した資料等は,説明の材料として新聞,雑誌等に転載することができる。ただし,転載を禁ずる旨の表示がされている場合はこの例外規定は適用されない。

 

 これは、著作権法32条からの(まさに)引用です。さっきの翻訳の項ででてきた「条件付きで OK」というのは、引用してるときならいいよってことです。論文の引用とかを例に浮かべればわかりやすいですが、英語の文献を引用しても日本語に翻訳しないと伝わりませんよね? だから、本来翻訳権は著作者にあるんだけれども引用部に関して言えば翻訳して良いわけです。学術の発展につながりますし、こうしたルールがあるのは納得できますね。

 この文中にある注というのは文化庁が付しているもので

 

(注5)引用における注意事項 他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。

(1)他人の著作物を引用する必然性があること。

(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。

(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。

(4)出所の明示がなされていること。(第48条)

 

のことです。また、サイトによっては「勝手に改変を行わないこと」つまり「一字一句変えないこと」という条件をあげている場合もあります。裏話になりますが、当ブログのプラットフォームである はてなブログ ではツールバーに引用というボタンがあって、このボタンを押すと縦長の灰色が現われます。これが、(2) にある区別を示すわけですね。

 さて、ここからがややこしくなります。(当ブログも含め)歌詞翻訳ブログは、どういう扱いになるのでしょう? 

 まず、この条文と注釈を見る限り、歌詞翻訳ブログが翻訳を許されるのは、歌詞を引用している場合のみですよね。注に当てはめて考えれば;

 

①歌詞を引用する必然性:歌詞の話をしてるわけだから必然性は大ありですね。

②地の文と歌詞の区別:ブログによりけりでしょうが、レイアウトに気を配れば十分守れます。

③主従関係:歌詞を引用して、「これはこういう意味なんじゃないか」「私にはこんな思い入れがある」っていうように、あくまで自分の書いたものが中心になるならば OK。ただ単に歌詞を載せるだけだと、歌詞が主になってしまうので NG。

④出典:歌詞が公式に公開されていれば、「歌詞カードより」「ホームページより」とか書けますね。

 

となります。うぅむ、まぁブログによっては全然守れる内容ではありますね。

 ただ③の点に関して、歌詞を全文引用して、全文翻訳しているブログ(当ブログもですが)はたして引用と言えるのでしょうか。個人的には、これはケースバイケースなんじゃないかと思います。歌詞や翻訳が1500字で、地の文が10000字あればその主従関係は明らかでしょうが、地の文の内容があまりに薄ければ話は別です。ちなみに、当ブログはできるだけ地の文にいろいろな情報を詰め込んで、私の書いたものが主な内容にできるように最大限の努力はしています。歌詞の事だけじゃなく音楽の事だったりいろんな情報を集めたり。10000字級の記事はそう書けませんし、楽曲によっては書くことがうまくまとまらず短くなってしまうこともあるのですが...。

 また、④の点も、ジョーさんに関してはややこしいことになってます。公式に発表されている歌詞もありますが、だいたい半分は未公開です。当ブログでは公式に公開されている歌詞は掲載せず(無断転載禁止ですしね)、リンクを貼るようにしています。ただ「無断転載」というのも考えてみればあいまいな部分があって、逆に言えば何が「合法的転載」なのでしょうか。出典を示せば無断ではない? それとも本人に許可を取って文字通り「断り」をいれるところまで?

 また、公式にリリースされていない歌詞については、耳で聞こえるままを載せていました。「引用」とは文字にされているものを利用することであることなのですが、もととなる文字列がないものを書き記すことは著作権的にはどのような扱いになるのでしょう? はたして、当ブログの活動は「無断転載」「合法的転載」「引用」「掲載」 のどれなんでしょうか? この点に関しては、文字にされていないものは引用してはいけないという考え方があるようです。

 しかも、サイトによっては引用の要件に挙げている「改変をしないこと」、こちらも達成はなかなか難しい。公式に歌詞がリリースされるまでは、誰にも正解が分かりませんからね。

 さしあたり、誰ともトラブルにだけはなりたくないので当ブログでは歌詞の公開を停止しています。うぅん、そんなことになっても誰も得しませんからね。

 

 

終わりに

 

 そんなこんなで、権利関係のトピック五点をピックアップしてお話してきました。私自身至らない部分が多くて、皆さまのご指摘にはほんとうに感謝しております。この情報がどれだけ正確なのかはわかりませんが、ある程度参考にしていただければと思います。

 法律というものは円滑にトラブルなく生きていくうえでもちろん守る必要があるわけですけど、一方で法令遵守には文字解釈がついて回るわけです。法律は汎用性を高めるためにあえて余白を多く作られています。文中の通り、ケースバイケースにうまく対応するためです。とはいえ、一定の基準がないと世界中の争いは解決できたものではありません。そのために、法を正義のもとに運用してどこかで線引きをする裁判官が必要なわけですね。

 憲法学という学問は、日本における最高の法規範である憲法の文字解釈を行う学問です。憲法ほど絶対的で揺らいではいけなさそうなものでさえ、その解釈を巡ってご飯を食べられる人がいるわけです。

 この記事の中では、私は重箱の隅をつつくような疑問をいくつか挙げてきました。細かい奴だとか屁理屈を言うなとか思われるかもしれませんが、頭ごなしに善悪を決めつけるのではなく、しっかりと制度を見つめたうえで自分なりの結論を出すことも大事なことではないかと感じます。

 ルールを守って、正しい音楽ライフを送りましょう!!