井上ジョー 'In a Way' 全曲紹介 pt.1
このアルバムがデビュー作だなんて。
2007/09/19発売のミニアルバム。全5曲収録と短いですが、ジョーさんの音楽的ルーツに迫ることのできる、名刺代わりの一作です。
ジョーさんの音楽キャリアは、2005年、弱冠ニ十歳で日本へデモテープを送ったことから始まりました。詳しくはこちらの記事にまとめていますが、そのデモには "Nowhere" も含まれていたそうです。ソニー傘下の個性派事務所 Ki/oon と契約を果たし、日本での活動が始まっていきました。デビュー前後の時期についてはご自身がイラストとともに語ってますのでご覧ください。
このアルバムに収録されている楽曲って今聞いてもかっこいいと思うんですが、当時はそれほど歓迎されなかったようです。
まず、当時の日本の音楽界にソロ男性アーティストへの需要はありませんでした。実際2006年および2007年の音楽界を振り返ると、ジャニーズ勢や倖田來未さんなどの女性ソロが人気で、ジョーさんのようなアーティストは(小田和正さんや福山雅治さんなどの「例外」を除いて)鳴りを潜めていました。
また、日本ではまだ英語で歌われたロックへの土壌が成熟しきっておらず、ホンモノの英語を使えるという武器が活きませんでした。これはマネージメント側との意見の不一致という言い方もできますが、「日本人に英語の歌は伝わらない」という言説は業界を強く支配していたようです。
さらに、爽やかアイドル的な売り出し方もジョーさんの意向とは沿っていませんでした。今となっては YouTube などを通してジョーさんのおちゃらけぶりは広く知られるところとなっていますが、アーティストが個を発信できるフォーマットが限られていた時代にあって「らしさ」があまり伝わらず悩むことが多かったそうです。
もっと言うなら、このアルバム作成は初めての「プロとの共同作業」ということになったわけですが、いまいちお気に召さない部分が多く苦労したようです。録音のため何度も演奏するうちに初期衝動が消えてしまったとか、プロはセオリーにとらわれ過ぎているとか、うまくいかないことが多かったと語っています。2020年にリリースした 'Vintage Collection' にはこのアルバムの楽曲のデモ版及び別録が収録されていますが、ジョーさんはそちらのミックスの方がベターだと公言して憚りません。
個人的にはこのアルバムは素晴らしい曲揃いだと思うんですが、本人は必ずしもいい思い出ばかりではないそうで。リスナーが抱く印象とアーティストが持つ感慨は一致しないんですねぇ。
こちらはジャケ写撮影の BTS です。2012年に Facebook に投稿されました。ほんとにキレイな青空ですよね。
Photo session for my mini album, IN A WAY from few years ago
Joe Inoue 井上ジョーさんの投稿 2012年7月19日木曜日
最後に、このアルバムについてのニュース・ブログ記事をご紹介しておきます。
・IN A WAY | 井上ジョー | ソニーミュージックオフィシャルサイト (sonymusic.co.jp)
ソニー公式のページ。基本的な情報に加えて、当時の宣伝文句も垣間見えます。
・一人エルレか!? 逆輸入新人“イノジョー”? | BARKS
Barks による2007/08/13の記事。ジョーさんの音楽的バックグラウンドや ELLEGARDEN との類似について紹介されています。
CDJournal の CD 情報ページ。ソニーのものより仔細で、アルバムへのちょっとしたコメントもついています。
・オルタナ・ポップなニュー・カマー“井上ジョー”デビュー! - CDJournal ニュース
CDJournal による2007/08/21の記事。ジョーさんの制作風景が公開されていたという記述が残されています。
・インタビュー:ハイブリッドな音楽性を持つ新感覚アーティスト、井上ジョーがデビュー - CDJournal CDJ PUSH
CDJournal による2007/09/20の記事。ジョーさんの当時のライブスケジュールのほか、自身の口から語られた音楽半生も掲載されています。必見です。
・J-WAVE WEBSITE : TOKIO HOT100 (j-wave.co.jp)
2007/09/16にラジオ局 J-WAVE で放送された文字起こしでしょうか。これから来そうなアーティストを紹介する企画でこのアルバムが紹介されたんですね。
・J-WAVE WEBSITE : TOKIO HOT100 (j-wave.co.jp)
2007/09/30に J-WAVE でオンエアされたクリス・ペプラーさんとの対談の模様です。今でもこの番組には有名どころが多く出演されてますので、ここに出られるのはそこそこの栄誉なんじゃないかと思います。
2007/10/02のブログ記事。ブログらしい率直な意見が書かれていてなかなか興味深かったです。