井上ジョー "Konbini"
日本で言う四六時中は、英語では7/24って表現するそうですよ。
この曲は、2017年のアルバム 'Salvage Demo Session #1' に収録されています。独特な表現で、ジョーさんのコンビニへの愛(?)が歌われています。
この曲ではジョーさんに固有な言い回しとか言葉遊びとかが多く含まれていて、ちょっとした語録となっています。ジョーさん公式ジョー語辞典もありますが、そこにないもので生配信とか動画で登場するものもありますし、この歌に登場する三単語について一度整理してみましょう。
・ブリリン滞在記:2005年から2013年まで放送されていた『リンカーン』というお笑い番組の「世界ウルリン滞在記」というコーナーをもじったものかと思われます。ちなみにこのコーナー名をたどると、1995年から2007年まで放送されていた『世界ウルルン滞在記』という番組にたどり着きます。ジョーさんがどちらの番組を参考にしたのかはわかりませんが、無類のお笑い好きですからねぇ。
・チャリリン・モンロー:言うまでもなくマリリン・モンローですね。
・チャリリン・マンソン:言うまでもなくマリリン・マンソンですね。「マリリン・マンソン」というバンドのボーカリストです。ちなみに、この名前は芸名で、上記のマリリン・モンローとカルト指導者で犯罪者のチャールズ・マンソンから掛け合わせているそうですよ。
ボーカルの声色がもう七変化です。レンジの音から腑抜けた魂まで、怒り、焦り、煽り、皮肉、哀愁と立て続けに、これでもかと表現します。こうしたミュージカル系もとい寸劇系の楽曲は 'Joepop #3' あたりから登場してきますが、これほどまでに表情豊かなものははじめてかもしれませんね。その分、同アルバムの "Aishiteru" では一切の感情が抜け落ちてしまいましたが。
ジョーさんはわりと楽曲の中で「クソ」とかためらいなく使いますが、これは英語脳的な感覚なんでしょうかね。日本語は罵倒語が少ないというのはよく言われる話ですが、英語ならもっとバリエーションをつけて表現できるものが日本語ではすべてその一語に集約されてしまうんでしょうか。それとも単にこれがやさぐれジョーさんの気持ちなのか。他の楽曲と合わせて考えてみるとおもしろいかもしれません。
歌詞に注目が集まりがちなこの曲ですが、バンドもなかなかテクいですね。
ドラムを聴いてみると、スネアの打ち方とか必要以上に複雑ですよ。さらに、ドラムセットと聞いて思い浮かべるものにはたいてい付属していない、ロートタムという薄いタムの音も聞こえます。南国っぽいというか軽快な音の正体がこれですね。
エレクトリックなベースラインも、ときにメロディとなるボーカルと絡み合いながら音符の量マシマシで進行していきます。そんなにグネグネ移動するしなくてもよくないすかってくらい上下してます。
そして最後はアコースティックギターの切ないサウンドで哀愁を表現して締めると。
そもそも曲の展開が目まぐるしいです。2:30と短い楽曲が一番と二番に分かれてますから、ひとサイクルは1:15という長さ。これもさらに5個くらいに分けられるのではないかという気がします。
Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→大サビ
という構成が一般的だとすれば、サビらしいサビこそありませんが
A, B, C, D, Eメロ × 2
というのがこの曲ですね。
こうしてみてくると、基本的にこの曲は「いろいろな要素を必要以上に詰め込んでみた」というスタンスを取るのかもしれません。そんなにやらなくてもって感じですね。はて、これは奇しくも、よろず屋的な(もしくはそうなることを期待される)現代のコンビニの在り方自体を表現しているのかもしれませぬ。コンビニに品出しをするごとく、ジョーさんの引き出しを大放出したんでしょうかね。
動画中に言葉遊びとして登場したケビン・スペーシー Kevin Spacey は、ジョーさんが好きな映画として挙げているアメリカン・ビューティー American Beauty の主演です。英語版のジョーペディアには日本語版には載っていない情報があったりします。
正直この楽曲からコンビニ愛はまったく伝わってきませんでしたが(笑)、こんな動画も出してますね。セブン万歳!