井上ジョー "Depth of Field"
これはまたサビが良い...。
2017年のアルバム 'Joepop #3' に収録されたこの曲。個人的にはすべてがサビのためにお膳立てをしているように感じるくらいサビの歌詞がいい。淡いなぁ。
Depth of Field - Music Video (Lyrics)
MV が野原で撮られてるので引っ張られちゃいますが、タイトルになっている Depth of Field とは、被写界深度という意味のカメラ用語です。ある一点にピントを合わせたとき、その前後もくっきり見える幅のことだそうで、iPhone のポートレート機能はこの被写界深度で遊んだものなんでしょうかね。
この曲はヴァースの部分が日本語で歌われていて、サビが英語&日本語となっています。わりと場面的で抽象的な歌詞が続くので、パッと見て共感できる度合いはそこまで高くないかもしれません。状況やストーリーを思い浮かべながら聴くといいでしょう。
第一段と第二段では、『君』と『僕』とが何か作業している情景が描かれています。学園祭の準備なのか、部屋か何かの改装をしているのか、ペンキを使っているようです。個人的にはピクサーの映画『カールじいさんの空飛ぶ家』の郵便ポストを思い出しました(Pinterest に写真があったので気になる人は見てください。映画の中であの一連の回想シーンが一番好きです)。映画中では夫婦は仲睦まじくリフォームに勤しんでましたが、こちらではどうにも気まぐれさんがいるらしく飽きてしまっているようです。それでも『僕』は、この二人の時にずっと続いてほしいと思っているようです。おいおい青春だなぁ。
一転、サビ前の第三段では『僕』が一歩踏み出そうとしています。『体当たりの心得培って』というのはなかなか独特な表現ではないでしょうか。一般的なコロケーションとしても、心得は持ったり学んだりするものであって決して栽培し育てるものではありません。ジョーさんによる英訳では Cultivate your spirit 精神を耕す、といった意味になるでしょうか。この表現は、主に人生をよりよく生きるために、といったようなスピリチュアルな文脈で使われることが多いようですが、体当たり的な要素は含んでいません。日本語にも英語にも存在しない表現なようですが、果たしてどんな意味合いを持っているのでしょうか。立ち止まって考えてみると、この楽曲への思いが深まるかもしれません。
第四段はサビとなりますが、第八段で言及しますので飛ばしましょう。
一番では第一段と第二段のエピソード上の結びつきが強かったのに対し、第五段と第六段は別個のもののようです。第五段ではふたりの今までが少し回想されているように見えます。かなり情景的で、ふたりの日常が垣間見えるようです。ここで『午後』を形容しているのが「瑠璃色」なのか「ルビー色」なのかは諸説ありますね。
第六段。"Hold You Down" でも『半熟のボート』なる単語が出てきますが、ジョーさんは舟をたまに持ち出してきます。『面舵』は舵を進行方向の右に切ることで、『ようそろ』は「まっすぐ行け」みたいな意味合いだそうですよ。
第七段は第三段と同じ歌詞ですが、サビの直前に『口に出せ』というフレーズが追加されています。この部分はウェブコンでたまに『走りだせ』に変わったりもします。
最後に第四段と第八段、サビです。私はこのサビの歌詞が大好きなんです。feel と real で韻を踏んでるのをまずは押さえておきましょうか。いやぁ『君』が『僕』のほおにキスしてくれたんですね。夢みたいだぁ、って言い回しを決して真新しいものだとは言いませんが、古典には古典の良さがありますよ。この想いがいつか『君』に届くように、という祈りとともにこの曲は終わります。いやぁ良い歌詞だ。
こちらの長めのヴログはスウェーデンのマルメ(ジョーさん的にはマルモらしいですけど)で撮影されています。サムネを見てわかる通り、MV はこの時のフッテージから採用してるみたいですね。思ったよりおっぱいがたくさんありましたんでぜひチェック!!