井上ジョー "Kyoto (Vuvuzuke Dosue)"
ヴヴヅケ ドスエ トゥディ。
2021/03/16にリリースされたこの曲。ダウナーなトラックにのせて京都の思い出をラップしていく日本文化発信ソングです。
Kyoto (Vuvuzuke Dosue) Official Music Video
歌詞はこちらから。
我慢できないからもうそろそろ新曲リリースしようか考え中
— 井上ジョー (公式) Joe Inoue (@inouejoe) 2021年3月12日
新曲をこっそりリリース..京都に捧げるHIP HOP。 https://t.co/XArluMpj7f
— 井上ジョー (公式) Joe Inoue (@inouejoe) 2021年3月15日
数日前から新曲リリースの気配はひしひしと感じられていました。このほかにもレコーディング後にメンバー限定配信を行っていたりもしていましたので何となく覚悟はできていましたが、まさか日本時間夜中のリリースとは思いませんでしたね。ジャケ写は京都の五重塔とジョーさんの顔とを重ねた美しいものです。緑がかったカラコンが神秘的。
タイトルにもある「ぶぶ漬け」。名前(とそれにまつわる迷信)は聞いた事があるけど実態はよく知らない、という人もいるかもしれません。そんな方にはこちらの記事が面白かったです。一般的にはぶぶ漬けは京都風のお茶漬けのことで、お客さんに出すものというよりは家庭でかきこむシンプルなものであるようです。
で、京都の代名詞ともいえる都市伝説といえば、「『ぶぶ漬けどすえ』は『帰れ』という意味だ」というもの。落語などの古典芸能でも見られることから裏付けとなる根拠はあるようですが、現代人の感覚としては、今ではこうした暗号はあまり存在しないようです。勧められたら安心して食べてください。
ジョーさんが京都を語るときにも、いつもぶぶ漬けという単語がギャグとして出てきます。あとはほうきを逆さにするとか。なので、京都をテーマにした楽曲の副題にこの単語が含まれているというのは、まぁなんともジョーさんらしいというかクスっと笑えるポイントなわけです。
トラックの感じは、'Wet and Dry' に入っていそうな感じですね。暗めな音色のベースにのせた高速ラップ。かなり京都ご当地な語彙が使われています。かの地にあまりなじみが無い人にとっては、この曲は良い観光ガイドになるんじゃないでしょうか。また、京都で撮影したMVもこのクールな曲調によくマッチしています。MV冒頭にはリリースされた音源にはないタイトルコールがつけられているんですが、おしゃれに仕上がっていますね。この冒頭の部分、色彩が鮮やかでゴシックなフォントでカット割りが多くてと「Vlog 感」がかなり強かったので普通に観光映像的なものを作ったのかと思いましたが、まさかの自身の頭部との共演でした。クールジャパンの側面を強く出せば音楽ファン以外にも届く可能性も高いですから、普通に映像を繋げるだけでも良かったんじゃないかと思いますが、いったいどういった演出意図があるんでしょうかね。
MVの最後には、Joe Inoue Films の文字があります。こちら懐かしい表示です。ここでは少し、この表示の歴史を紐解いてみましょう。
それ以前にも映像作成に関わっていた可能性は十分にありますが、監督:井上ジョーという表示が初めてなされたのは 'Dos Angeles' 収録の "Home" です。その後、パンクバンド Totalfat のMV監督を二回務めています。このコラボ二作品のうち後出の "Room45" が、Joe Inoue Films の初お披露目です。
"Room45" のリリースから一か月後、Tenguboy が始動しました。続く一年間で9つのMVがリリースされましたが、なんと "Piko Piko Rock" を除く8本でジョーさんが監督を務めています(最終作 "ごっつぁんDeath!!!" のみ Directed by Joe Inoue との表示でしたが、それ以外の7本は Joe Inoue Films との表示です)。Tenguboy の頃は特に「全部自分で」を強く打ち出す方針だったようで、何ならMV作成講座まで企画されていましたので、監督としての力量を示すためにレーベルが主導した表示だったのではないかとも思われます。ですが、この表記は次第に影をひそめていき、"Spinning World" ではMVを監督したと言われていますが大々的に宣伝されてさえいません。結果、2013年8月から2014年5月までという限られた期間での使用に留まったのです。
さて、こんな長い歴史を持つ Joe Inoue Films、今回実に7年もの時を経て帰ってきたんです! もう感慨深いったらありません。なお、これはロゴというよりは決まり文句みたいなものであって、決まった形があるわけではありません。"Room45" では一列で書かれていましたが、Tenguboy 時代には Joe/Inoue/Films と三列にまたがって表示されました。今回はJoe Inoue/Films と二列表記。 細かなポイントですが、興味深いです。
MVの概要欄には「ジンバル不使用」との文言がありますが、ジンバルというのはカメラ用語で、手ブレを防止するための安定具だそうです。GoProを手持ちして撮ってやったぜ! ってことだと思います。たしかに素人目にもスムーズに撮られているように思いますが、カメラ好きな人なら驚きはひとしおなんでしょうかね。
では、この曲に登場する単語について、個人的に調べた内容で解説していこうと思います。
はんなり:京都といえばという代表的な語彙。辞書にある意味以外にも「マイペースな」という意味もあるそうで、京都弁では裏の意味をしっかり読むことが大切ですね。
山陰LINE:JR西日本の路線、山陰本線。京都駅と山口県下関市とをつないでいます。
嵯峨嵐山駅:山陰本線の駅。平安時代に遡る長い歴史を持つ観光地、嵐山に行きたいときに便利。
竹林:嵐山にある「竹林の小径」のことでしょうかね。ここでは竹林と似た響きの言葉が並んでいます。
二年坂:飲食店や雑貨屋が立ち並ぶ名所。清水道というバス停に近く、京都市営バスの206系統に乗ればいいんですが、この路線が曲者なんです。なんと、57もの停留所で山手線のように円を描いているんですね。そして、時計回りの甲と反時計回りの乙という区別が存在するんですが、これはバスの表示を見てもよくわからないそうなんです。知恵袋にも質問がありましたので、京都観光ではわりと定番の罠なんでしょう。地元の人でさえわからないことがあるそうなので、観光の際には自分でしっかりと行き先表示を確認しましょうね。ちなみに京都駅から出発した場合、清水道バス停には東山方面に向かう反時計回り循環、乙に乗る必要があります。
天橋立:京都北部に存在する、日本三景の一つにも数えられる絶景スポット。展望台からの景色がステキですが、その分登るのは大変なんですね。で、この周辺はいくつかのエリア分けがなされていて、ざっくり言うと北の山岳地帯が府中地区、南の駅に近い当たりが文殊地区らしいです。これによって府中派・文珠派というわけですね。
舟屋:京都北部には、伊根の舟屋とよばれる伝統的な建物群があるそうです。伊根湾に面する地域で、湾の穏やかな性質を生かした観光業が盛んです。伊根湾の入り口部分には青島という無人島があり、漁師たちの信仰を垣間見ることのできる神社もあります。
海と星の公園下バス停:実際に丹後 海と星の見える丘公園という場所があるんですね。ちなみにこちらの公園へは波見口というバス停が一番近いそうで、ううむ不思議なネーミングです。
答え合わせ動画ですね。
曲中に出てくる "かわら Roof"。これは「瓦屋根」のことなのか、それとも(公式な歌詞通り)「河原、屋根」なのか。私はずっと考えています。京都には鴨川を筆頭に風情のある河川が多くありますので、まぁ河原と屋根を並列していてもおかしくはないんですが。
京都への小旅行をした気分になりましたね。以下に、この曲に出てくるスポット八地点をピンしましたので、位置関係を確認してみて下さい。
この曲とは全然関係ないですが、京都関連の動画で言うとこれがありますね。全然関係ないけど。