井上ジョー "KRD"

春夏秋冬、じゃないんですねぇ。

 

この曲は、2016年のアルバム 'Joepop #1' に収録されています。なかなか味のあるイラストが登場する MV です。人気上位を争う曲。

 


Joe Inoue - KRD - Music Video (NOW ON SALE)

 

 


KRD Lyrics and explanation (English translation included)

 


KRD 歌詞解説

 

歌詞は赤チャンネルの動画の概要欄に載ってますのでそちらを参照してください。日本語チャンネルには載ってませんが、赤チャンネルの二本にはジョーさんによる英訳もついてるので、英語の勉強にもなるかと思います。

 

音像に関して言うと、曲中ずっと使われているバイオリンとかのストリングスが、この地球規模のラヴソングにふさわしい壮大さを演出してますよね。メロとサビとのダイナミクスが良い。最初は静かに始まって、だんだん楽器が増えていって、サビで一気に盛り上がる感じ。最後には大団円。

 

 

歌詞に関して、解説動画まで作られちゃうと、もうわたしから言えることなんてないような気がしますが・・・。

 

よく言われてるのが、冒頭にも言った通り、春夏秋雪なんですよね。これが春夏秋冬じゃないのは、単に韻の関係だと思います。「ハル haru」と「ナツ natsu」はきちんと対応していますが、「アキ aki」と「フユ fuyu」はちょっと合わないですよね。「ゆき yuki」にしたとしてもばっちり対応できているわけじゃありませんが、もう少ししっくりきます。

 

一番最初のヒトミのパート、ちょっと複雑なテンポ感で歌ってるの気づきましたか? 表で入ってる部分と、裏で入ってる部分と、あるんですね。感覚的にわかりやすいように言いかえると、「ひーとーみー」じゃなくて「ひぃーとみぃー」て歌ってるんです。手を叩きながら歌ってみてください。手拍子に合わせて「ひーとーみー」てやると、とてもダサく聞こえますよね。

まぁこの辺までは普通な工夫って感じがするかもしれませんし、もう一歩踏み込んでみましょう。「ひぃーとみー」と「ひぃーとみぃー」の何が違うのか。このフレーズは3.5拍分(続く「ありがとう」も食い気味で入ってくるため4拍分は歌わない)ですが、

「ひぃー・と・みー」を、1.5拍、0.5拍、1.5拍で歌う感覚。(he-to-me)

「ひぃー・とみ・ぃー」を、1.5拍、0.5拍、1.5拍で歌う感覚。(he-tom-ee)

この二つって少し違いますよね。このリズム感を間違えていたら、もしかしたらダサい曲になっていたかもしれません。(これのしわ寄せを食って「美しい」の部分が少し間延びしちゃってますけどもね)

 

もう一つ思ったのが、名前になる部分(ヒトミ、ユカなど)を強調する工夫がなされてるってとこです。この曲は全体的に歌詞がぎゅうぎゅうに詰められていて、右から左へどんどん情報が流れていきます。それでも、曲のテーマとなるキーワードだけは、頭に残るような作りになっているんです。

これを見ていくときは二番の方が分かりやすいと思います。二番では、名前になる単語は、全部文章の末尾に置かれていて、さらにそれなりの拍数が用意されているんです。「ユカッ 僕を~いつでも~支えてくれてる~」ではなく、『僕をいつでも支えてくれてる ユ~カ~』って感じですね。これは拍数の対比でより耳に残りやすくする工夫ではないでしょうか。

一番の方はどうかと言うと、こちらは拍数を確保できなかった代わりに、連呼しています。どの娘も、続く文章の中で名前が連続登場してるんです。あれ、じゃあアッシーとテテはどうなの? と思った方、鋭い。これについては、アッシーはあっちと韻を踏むことで、連呼するのと同じ効果を得てます(実際音も似てるし)。テテはというと・・・残念ながら例外と言うしかありません。ただ、『テテがいなければ ぼくは・・・』って結構印象に残りませんか? ぼくは何なの?! 何ができないの?! ていう。言わないことによってかえって印象的にするっていう手法はドリカムの "Love Love Love" とかでもありますね。

 

どのくらいこれが意図されてるものなのかはわかりませんけれども、人気曲にはそれだけの工夫が込められてるって感じですかねぇ。

 

この曲の初出は、2014年7月21日のこの投稿です。貼られている MV のリンクは今では無効ですが、概要欄を見るに2011年には早くも完成していた可能性もありますね。5年もの時を経て、満を持してのリリースだったんですね。

 

 

このデモ版がどんな感じだったのかなぁということを垣間見ることができる記録をご紹介します。'Joepop #1' リリース時に、Facebook上で全曲にコメントをなさってる方を見つけました。私としては、私以外にもこういう類の物書きが他にも居るということに嬉しく思いました。デモ版にも言及されている部分があったのでここに引用させていただきたいと思います。

 

Krd: Actually tabbed the whole demo because I liked it so much. Excited for the full track. Even calmer than the demo. Incredibly warm feeling. Super elaborate final mixing touches! 

More Krd: Just. Such. Fucking. Great. Harmonies!!! 

出典:Julian Hartmann 氏の2016年11月17日の "KRD" 評。この投稿のコメント欄より。

 

デモ版よりも、今回リリースされた音源は穏やかになったそう。ミックスが凝ってて、特にハーモニーが素晴らしいと大絶賛です。