井上ジョー "Beautiful World"

耽美的で官能的。

 

今回は、'Wet and Dry' 収録の''Beautiful World'' をご紹介。

 


Joe Inoue "Beautiful World" Official Music Video

 

シンプルながら雰囲気のあるトラックですね。いつものジョーさんはドラムとベースにこだわりがあるように聞こえますが、今回は抑えめです。ラスサビ前でドラムのフィルが入るくらいでしょうか。MV を何回も見た後なので結果論的な話にはなりますが、埠頭の夜景なんてもうピッタリじゃないですか? 横浜辺りで聴きたくなるような感じがします。

そんな大人なトラックに載せて歌われるのは、これまたオトナな内容です。オブラートに包みはするものの、ともするとお下品な方向に向かいがちなジョーさん('Joepop #3' とか結構えげつないこと言ってる曲多いんですよね)ですが、これは完全に芸術に昇華されてます。誰か特定の you とかではなく、ほとんど概念を相手に歌ってるように感じます。高校の倫理の授業で習ったプラトンイデア論にも通ずるような、美の究極形を探し求める旅路というか。特にジョーさんの曲は「きみ」をはっきり明示するものが多いという言説を念頭に置くと、まずまず斬新な切り口の歌詞ではないかと思います。ただ「美人なお姉ちゃん! おっぱい!」で終始していた昔からはかなり成長したという言い方もできるかもしれませんね。私はどっちの歌詞も好きですよ。

時々チェロ上さんもちらっと伺えるような歌詞です。ご自身も、とにかく相手に尽くしたいタイプだって仰ってましたがまさにそんな内容です。とにかくジェントルに。

しかしこの歌声ですわ。いや歌声と言うよりはもうほとんど吐息ですか? ええ。これは ASMR と言っても過言ではないですね。ライブでやったら男性ファンですらビートルズの来日公演ばりに卒倒してしまうかもしれません。

MV もこれなかなか秀逸ですよね。ジョーさんは光と闇の映し方が上手いって誰かが仰っていたことがあるように記憶していますが、まさにこのことですね。夜景繋がりでいうと、 ''KRD'' の序盤のシーンとか、パナマで撮った ''Hats On! Tunes'' とかも良かったですが、これももうとにかく美しい。

一聴すると派手さはありませんが、聞き込めば聞き込むほど味が出てくる、そんな曲ではないでしょうか。