井上ジョー "California"

ふるさと。

 

この曲は、2016年のアルバム 'Joepop #2' に収録されています。地元愛を歌っていそうな曲はたくさんありましたが、これはモロ地名まで出しちゃってます。

 


Joe Inoue - "California" - Song Preview

 

地元の仲間への感謝と一緒に時を過ごせることへのよろこびを歌にしています。落ち着いた感じで曲がスタートし、徐々に盛り上がっていって、サビで大感謝! みたいな感じですね。長い曲ではありませんが、自分の居場所はここなんだなって気づいた曲なんじゃないでしょうか。

 

さて、私はこのアルバムの根底に流れるひとつのストーリーが見えました。つまり、アイデンティティの再確立です。このアルバムは "The Trauma" "Hybrid Generation" というかなり内省的な二曲で幕を開けます。そこから東南アジアへ飛んで行ったり、恋したり失恋したり立ち直ったり。そして最後には自分なりの生き方を見つけたり友だちの大切さに気付いたり自分の居場所を見つけたり。そして、自分の半生を振り返りながらこれからも音楽を続けていくんだ! という決意で終わるわけです。そう考えるにつれて "More than Words" をわざわざ昔の機材から引っ張り出してきてまでトリに収録する意味も深まってきますね。前曲 "We Know, You Know" の大団円でストーリーを締めた後の、アンコール & これからの抱負みたいなものです。

アルバム解説で私は 'Joepop #1' との双子アルバム説を提唱しましたが、もう一つの見方として、井上ジョーという一人の人間がどう生きてきたかを記録したコンセプトアルバムとも考えられますね。ジギー・スターダストみたいなものです。

 

その一連の流れの中でこの曲がどこにあるかというと、自分の居場所を見つけるという段階です。前曲 "Hold You Down" がジョーさんの友人のひとりに宛てられた曲だということは知られていることです。ご本人が note に書いてますからね。そして、次に来るこの曲では友だちみんな、そして自分たちが住むカリフォルニアという場所こそが自分の居場所なんだということを再確認するわけです。2010年のアルバム 'Dos Angeles' 収録の "Home" でも似たようなモチーフは扱われていますが、六年の時を経てより実感を持って感じたということでしょう。「トラウマ」や「アイデンティティの喪失」をどこかで経験してからの再認識ですから。

 

なお、このアルバムがリリースされる一年以上前、Facebook 上にこんな動画が投稿されていました。

 

www.facebook.com

 

投稿にはダウンロードのリンク(今では無効ですが)が貼られていて、それを見る限りではタイトルは "California Desert (Demo)" のようですね。ちなみにこちら、タイトルが似ていますが "California" と音楽上の関係はありません。

舞台となるこちらは、ロサンジェルスから東へ 330km の砂漠に位置する Salvation Mountain という観光地で、地元住民のレオナード・ナイトさんという方が制作したそう。 聖書から引用された文言とカラフルで巨大な構えが目を引きますが、アメリカ美術界や国から保護される貴重な場所となっています。実は、"California" のプレビュー動画の背景がカラフルなのも、この場所の中腹で写真が撮られているからなんですね。ド派手。

うぅん、何とも渋い曲ですね。映像中ではウクレレを弾いていますが、実際にはアコギを弾いているでしょう。歌詞については特に触れません(笑)。まぁデモなのでね、思いついたままを歌ってくれればいいんですよええ。

映像中、なんだか見慣れた光景が・・・?そうです、服装と言い異様なハイテンションさと言い、'Hats On! Tunes' のジャケ写はこの機会に撮られたものでしょう。友だちといるジョーさんはあまり見る機会が多くありませんが、なんだかとても楽しそうで微笑ましく思います。

 

そんなわけで、地元愛溢れる二作品でした。